
半導体・電子材料における材料設計の課題と『BAHF』
半導体・電子材料分野では、デバイスの高性能化や高集積化の進展に伴い、材料に対して耐熱性、電気特性、光学特性、さらには製造プロセスへの適合性といった複数の要件を同時に満たす材料設計が求められています。
こうした要求に対し、今回ご紹介するBAHF(9,9-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)フルオレン)は、剛直なフルオレン骨格と複数の反応性官能基を併せ持つ化合物として、半導体・電子材料分野における新たな材料設計の選択肢となり得る素材です。
『BAHF』の構造と材料特性
BAHFは、フルオレン骨格の9位に3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル基が2つ結合した構造を有するジアミン/ジフェノール化合物です(図1)。分子内に「アミノ基(–NH₂)」と「フェノール性水酸基(–OH)」を併せ持つため、樹脂に組み込みやすい反応点と、樹脂特性や製造工程での扱いやすさに影響する官能基を同時に備えています。

骨格由来の特性:耐熱性、低誘電特性、屈折率への寄与
BAHFの中核であるフルオレン骨格は、剛直で対称性の高い構造を持ちます。この種の剛直な骨格は、一般に分子運動(鎖の局所運動)を抑制しやすいことから、耐熱性の向上や低誘電特性を狙った材料設計に有効な要素とされています。
また、光学特性の観点では、屈折率(n)に着目できます。BAHFは、樹脂設計において高屈折率化に寄与する構造要素として位置づけられます。
官能基の使い道:樹脂化とアルカリ現象への接続
BAHFはアミノ基を有するため、ポリイミドをはじめとする各種樹脂のモノマー(ジアミン成分)として利用できます。さらに、フェノール性–OHは樹脂中の極性や溶解挙動に影響するため、用途や工程に応じて次のような狙いを立てられます。
| アルカリ水溶液に対する 溶解挙動の調整要素 | フェノール性–OHは、アルカリ現像を想定する樹脂設計において、溶解性に寄与します。 |
| 後反応(保護、導入)の 反応点 | –OHは保護基導入やエーテル化・エステル化などの反応点となるため、目的に応じて機能を付与する設計にも展開できます。 |
このようにBAHFは、樹脂主鎖へ組み込むための反応性と、アルカリ現像などの工程を意識した設計や機能付与の起点となる部位を併せ持つ材料として、各種樹脂材料への展開が見込まれます。
想定用途とJFEケミカルの『BAHF』の可能性
BAHFは、先に述べた通り、樹脂主鎖に組み込むための反応性と、現像工程や後加工を見据えた官能基を併せ持つことから、感光性ポリイミド(PSPI)をはじめ、半導体材料・電子デバイス材料用樹脂原料など、幅広い用途への適用が期待されます。
PFAS代替材料としての可能性
こうした用途分野では近年、PFAS規制の強化を背景として、従来材料の見直しや代替材料の検討が進んでいます。その一例として、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンの置き換えが挙げられます。同化合物は耐熱性や絶縁性に優れることから、半導体材料や電子デバイス材料などで広く使用されてきましたが、–CF₃骨格を有するためPFAS規制の対象となり得ます。
BAHFはフッ素含有骨格を持たない一方で、物性面では置き換えが見込まれるポテンシャルを有しており、PFAS代替化合物の候補として注目されています(図2)。

JFEケミカルの『BAHF』
JFEケミカルでは、フルオレン骨格の特性を活かした材料開発に取り組んでおり、電子材料・光学材料分野における材料設計の自由度や可能性を広げる提案につなげていきたいと考えています。
BAHFは、耐熱・低誘電材料、高機能樹脂設計といった複数のニーズが交差する領域において、今後の展開が期待される材料の一つです。
本製品に関するご質問やサンプルのご希望などあれば、お気軽にお問い合わせください。
フルオレンの構造的特長や材料特性に関する詳細は、下記コラムにて解説しておりますので、ぜひご参照ください。
