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知見・コラム

精密化学品2025.12.15

芳香族化合物に含まれる5員環構造の意義とタール由来原料の特徴

#インデン#フルオレン#アセナフチレン

製鉄工程で副生するコールタールは、芳香族炭化水素の宝庫。石炭化学由来の化合物では、ベンゼン環に代表される環構造が特徴的ですが、そこでは、5角形(5員環)の構造も、ベンゼン環(6員環)に次いでよく登場する構造です。

インデン、フルオレン、アセナフチレン、これらは、当社精密化学品部で商品化することができたコールタール由来の成分ですが、いずれもその分子構造に5員環が入っています。これらは、安定なベンゼン環6構造とともに、芳香族性が弱く反応活性の大きい5員環構造を含んでいますので、その活性部分を利用して、目的に合わせて樹脂化や様々な誘導体への転換が容易です。

つまり、これらの化合物や構造を利用すれば、目標とする分子や樹脂に、芳香族成分を組み込むことが可能となります。これが、コールタールに含まれる数多くの化合物の中から、インデン、フルオレン、アセナフチレン構造をもつ化合物が、まずお客様や市場に受け入れていただけた理由だと考えています。

こ
『コールタール』
インデン
『インデン』
フルオレン、アセナフチレン
『フルオレン、アセナフチレン』

目次

  1. 6員環と5員環の組み合わせが拓く機能世界とは
  2. 希少性を支える分離・精製―複雑な混合物を価値ある素材へ
  3. 応用展開―先端エレクトロニクスへの活用
  4. 古くて新しい石炭化学の化学素材
  5. 最後に

6員環と5員環の組み合わせが拓く機能世界とは

インデン、フルオレン、アセナフチレンに共通するのは、「6員環+5員環」という“6–5縮環”の骨格です。6員環が担う強固な芳香族性に対し、5員環側はしばしばπ共役の主流から外れ、分子中の“活性点”として機能します。この活性点を利用することで、これらの化合物を様々な誘導体へ転換したり、樹脂化することが可能となり、目標とする材料に光学特性・電子特性・耐熱性などの特性付与が図れます。

とりわけフルオレンは、9位が活性メチレンとなっており、この位置で求核置換や酸化反応が進行します。また、芳香環部分では、主に2、7位で、ハロゲン化をはじめ様々な求電子置換を行うことができます。

さらに、酸化反応で得られるフルオレノンを縮合剤として、様々な誘導体を自在に展開できるなど、フルオレンは、“合成のプラットフォーム”と言える素材です。インデンやアセナフチレンも、5員環部分に存在する二重結合を利用して、数多くの誘導体合成や樹脂化が可能です。

JFEケミカルは、これら“タール中の宝石”ともいうべき成分を精密化学の起点として、光・電子機能材料や高機能樹脂へ応用しています。

『インデン』
『フルオレン』
『アセナフチレン』

フルオレン“合成のプラットフォーム”

希少性を支える分離・精製―複雑な混合物を価値ある素材へ

コールタールは、コークス炉での石炭乾留で得られる高沸点の複雑混合物で、インデン、フルオレンをはじめとした有用成分の宝庫ですが、同時に数えきれないほどの化合物群を含んでいます。この原料炭種の多さや操業条件によって成分分布が揺らぐ“カオス”を、製品としての“秩序”へ写し替えるために、当社ではまず、タール蒸留塔を用いて、沸点が低い順に、タール軽油、カルボル油、ナフタレン油、タール吸収油、アントラセン油、ピッチと呼ばれる留分へ段階的に振り分けます。

ここで、インデンは、カルボル油~ナフタレン油に、アセナフチレンの原料となるアセナフテンは、ナフタレン油~タール吸収油に、フルオレンはタール吸収油に含まれています。さらに各留分を、精密蒸留により目的成分の高含有フラクションに選り分け、必要に応じて、晶析、抽出など、蒸留以外の分離精製方法も駆使して高純度化しています。電子材料グレードの材料では、着色や微量金属等の繊細な管理も行っています。

こうしたプロセスエンジニアリングが、インデン・フルオレン・アセナフチレンを“化学の素材”へと昇華させ、当社製品群(誘導体ラインアップや特性グレード)を支える基盤になっています。鉄鋼由来の一貫したプロセスにより、原料の安定供給と品質の再現性を両立できる点も、当社タール化学の競争力の源です。

応用展開―先端エレクトロニクスへの活用

インデン骨格を樹脂に導入したものは、耐熱性の向上、光学機能の発現が見られ、機能性樹脂原料として使用されています。またインデンそのものは、医農薬や香料などの出発原料としても利用されています。

フルオレン骨格を樹脂に導入すると、フルオレン環が樹脂の主鎖に対して直交する、「カルド(ちょうつがい)構造」と呼ばれる構造が得られます。この結果として、高屈折率と低複屈折の両立、耐熱性、低誘電特性といった、他の材料では見られない樹脂特性が得られます。これらの特性は、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリイミドなどの様々な樹脂で活用され、樹脂レンズ、光学フィルム、半導体レジスト、ガラス代替透明ポリイミドなどの高機能樹脂素材に利用されています。この他にもフルオレンは、有機ELポリマーの基本骨格としても注目されています。

「カルド(ちょうつがい)構造」

カルド(ちょうつがい)構造
スマートフォンレンズ

アセナフチレンは、高耐熱・高C含有率のナフタレン骨格由来で、耐熱性、絶縁性、低誘電、反射防止性に優れ、また、反応性の高い二重結合により樹脂化が比較的容易なため、半導体材料や電気電子材料用の樹脂原料として利用されています。

当社は、タール由来骨格の“素材力”を存分に活かし、分子設計とプロセス技術の両輪で価値を向上しています。

古くて新しい石炭化学の化学素材

戦後80年、化学産業は、原油を出発にしてナフサ分解で得られるエチレンを基盤とする、石油化学を中心に発展してきました。石油化学由来の脂肪族化合物の合成が技術の中心となり、石油の利用が進む前の芳香族化合物を中心とした石炭化学は、ほぼ終わった技術分野とみられていた感すらあります。

しかし、電気電子材料を主に、化学素材に求められる性能は、高度化、多様化してきています。このため、従来の石油化学由来の材料のみならず、石炭化学から得られる芳香族化合物も、その環構造に由来して発現する耐熱性、光学特性などの特性が重要な分野を中心に、再び注目を集めるようになってきました。

最後に

JFEケミカルは、鉄鋼由来の安定供給を背景に、タール発の精密化学を磨きこみ、分子設計×プロセス工学×品質保証の三位一体で、光学材料、次世代半導体、耐熱・低誘電の高機能樹脂といった次世代の要求に応えていきます。

インデン、フルオレン、アセナフチレンに関する情報は以下よりダウンロードください。

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