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知見・コラム

精密化学品2025.09.17

次世代フェノール樹脂「ベンゾオキサジン」がひらく材料設計の地平

なぜ今ベンゾオキサジンが注目されるのか 

5G/6G通信、EV、そしてCFRP(炭素繊維強化プラスチック)に代表される複合材需要の拡大は、材料にこれまで以上に厳しい性能要件を突きつけています。 

  • 高周波領域:信号ロスを抑える低誘電率・低誘電正接(Low Dk / Low Df) 
  • パワー半導体:過酷な温度環境に耐える高耐熱性(高Tg・高Td) 
  • 複合材分野:加工や長期使用時の変形を抑える低収縮・低吸水・無揮発性 

こうした要件を同時に満たせる数少ない次世代樹脂がベンゾオキサジンです。

無揮発の開環硬化によりボイドレスで寸法安定性に優れ、さらに高周波特性・高信頼性を兼備。
高温・高周波・高信頼性の三拍子が揃った材料として注目を集めています。 

ベンゾオキサジンとは 

定義と特徴 

ベンゾオキサジンは、フェノールと第1級アミン、ホルムアルデヒドを脱水縮合反応させて得られ、加熱によりオキサジン環が開環重合し、三次元網目構造を形成する熱硬化性樹脂です。 

従来フェノール樹脂との違い 

触媒不要の自己重合が可能で、副生物を発生させない点が最大の特徴です。これにより、硬化収縮が極めて小さく、残留応力やボイドの発生を抑制できます。 

化学的な基本特性 

ベンゾオキサジンの化学的な基本特性

ベンゾオキサジンの性能 

低誘電率・低誘電正接 
JBZシリーズでは1GHzにおける誘電率(Dk)=2.9〜3.5、誘電正接(Df)=0.009〜0.02級を実現。高周波基板用途で信号ロスを抑制。 

高耐熱性
高耐熱型グレード(例:JBZ-OAP100I)はガラス転移温度(Tg) 240℃以上、分解温度(Td5%)は390℃級を達成。 

低熱膨張性 
JBZシリーズは熱膨張係数(CTE)が約50 ppm/Kとエポキシ樹脂より低く、温度変化による寸法変化を抑制。5G基板や高精度部材での長期信頼性確保に貢献。 

低収縮・低吸水・無揮発 
硬化時の揮発分がなくボイドレスで低吸湿(0.3〜0.4%)。硬化収縮が極小で寸法安定性が高い。 

用途事例 

5G/6G基板
低誘電率・低損失により高速信号伝送時のロスを抑制。10GHz帯域でも誘電正接(Df) 0.005〜0.01級の報告例あり。 

EVパワー半導体 
高耐熱性、寸法安定性により、パワーモジュールの封止材として信頼性確保。高温環境での長期耐久性に寄与。 

CFRP(炭素繊維強化プラスチック)
低収縮・低吸湿により寸法安定性を確保。エポキシと複合すると衝撃強度が1.7倍向上、難燃性もUL94 V-0相当を保持。 

他樹脂との相補関係 

ベンゾオキサジンはエポキシ、ビスマレイミド、シアネートエステル、ポリイミドなど多様な樹脂と相溶し、競合ではなく相互補完的に性能を高めます。 

エポキシとのハイブリッド
ベンゾオキサジンの開環で生成するフェノール性水酸基や三級アミンがエポキシ硬化を促進、副生物ゼロでボイドを抑制。結果として電気特性・機械特性の向上を同時に実現。 

ビスマレイミド、シアネートエステルとのハイブリッド 
ベンゾオキサジンの開環生成物がビスマレイミド、シアネートエステルの硬化を促進し、強靭な共架橋構造を形成。
高ガラス転移温度(高Tg)と低誘電率(LowDk)低誘電正接(LowDf)を両立できる設計が可能。
航空・宇宙用途や高周波基板に最適。 

JFEケミカル「JBZシリーズ」の強み 

配合しやすさ
固体〜液状まで幅広いグレードをラインアップ(例:低粘度タイプJBZ-PA100Nは常温液状)。高溶剤溶解性で柔軟な樹脂配合設計が可能。 

歩留まり・信頼性改善
無揮発硬化でボイドレス、寸法安定性に優れる。CFRP成形では高強度・難燃性を両立。 

量産対応・共同開発実績
プリプレグや積層板、半導体封止などの用途でベンゾオキサジンの量産対応実績あり。 大手化学メーカーや川下企業とアプリケーション共同開発実績も豊富。 

FAQ 

Q. エポキシ樹脂の代替になりますか?  
A. 代替ではなく相互補完の関係です。ブレンドや共硬化によりで単独使用以上の物性向上が期待できます。 

Q. 高周波用途でも効果がありますか? 
A. はい。低誘電率(LowDk)、低誘電正接(LowDf)と低吸水が本質です。配合や測定条件によって異なりますが、10 GHzで誘電正接(Df) 0.005–0.01級の報告があります。

 Q. 加工は難しくありませんか? 
A. Aステージ低粘度と無揮発硬化は量産側に有利です。特殊な加工条件につきましては是非ご相談ください。

ベンゾオキサジンの特性等の詳細情報については、資料をダウンロードの上ご確認ください。

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